Ninomiya Kazuo
新書判・並製カバー・136p・本体1800円+税
2019年11月27日 初版発行
ISBN 978-4-8129-0983-6
子を捨てんと思へど海の青さかな
かつてこのような内容を詠んだ俳人がいたであろうか。
〈子を捨てんと〉と世間の道徳に反することを真正面からである。
この句の眼目は〈思へど〉である。仮に〈思へば〉であれば
〈子を捨てんと〉思ったが美しい〈海の青さ〉に自分の邪な心が
咎められて、やめた、という意になる。
だが、掲句の〈思へど〉にはそのような俗な道徳観はうかがえない。
〈子を捨て〉ることが〈海の青さ〉に象徴される大自然の中に
おいては自然なことなのだという意になる。
ここに檀一雄の真骨頂がある。
